夏休みが今日から始まり外で煩いくらい(いや、実際煩いのだが)蝉が鳴いていた

あぁ、どうせ今年の夏休みも何事もなく退屈な日々が続くんだろうなぁ…とか思ってた


















───はずなのに…


どうやらこれからは「退屈」とか「詰らない」という言葉が似合いそにもない日々がやってくるようだ


そう、波乱万丈な日々はこの時から始まっていたのかもしれない─────





























‡†Not Has Name†‡





























中学生になって初めての夏休みなのに私はもう中学校生活に飽きていた


夏休みはこれからなのに「友達と遊びに行く」等と言う楽しいイベントの予定今のところ、全くないし出来ないだろう









理由は至って単純明解。




一つはお金がないから


何故なら私は孤児院で育てられたから

ついでに言うと親が分からないから名字もない








もう一つは友達がいないから


友達がいない理由も簡単。

私がイジメられてるから

良くありそうな事だ

小学生は考える事がかなり幼稚だから自分とは違う人をすぐ仲間はずれにしようとする

それが6年間飽きること無く続けられたのだ





────中1と小6は対して変わらない

つまりは中学になってもイジメは続いたということ

敵意には敵意をという私の態度にも問題はあるかもしれないが…

自分で言うのもなんだけど、私の性格はハッキリとしているのだ












私はここでフゥと息をついて読んでいる本から目をあげた

少しでも涼しくするためにめいっぱい開いた窓からは熱風とギラギラと照り付ける太陽光しか入ってこないので窓とカーテンを閉めた


この方がまだ涼しい



もう一度本を読もうとした時───…



コンコンっ



「とうぞ」

「ねえちゃん、院長先生が呼んでるよ。応接室だって」

「わかった、ありがとう。すぐ行くね」

「うん」


私は読んでたページにしおりを挟み本を閉じて机の上に置いた

応接室?いったい何だろう?と考えながら私は部屋を出て階段を降り応接室に向かった

結局答えが出ないまま私は応接室の戸を軽くノックした


コンコンっ




「お入りなさい」



「失礼します」


私は室内に入った

応接室には大きなソファーが二つ向かい合っているが今日は私から向かって左側に院長先生、左側には──────知らないお爺さんが座っていた


白くて引きずるほど長い髪と髭

みたこともない不思議な服

半月型の眼鏡

そしてその奥で光る碧眼


…外国人のようだ



「この子がです」


えぇっ!?院長先生、日本語で言ってるよ!

通じたのかな?


「そうですか。君はいくつかな?」


うわ〜、日本語がかえってきた!


「・・・今年で13才です」

「そうか…」


老人は朗らかに笑って言った


、あのね…」


私はここで初めて院長先生の方を向いた


「この方が貴女を養子に欲しいっておしゃってるの」






・・・・・え?


「わ、私をですか?」


私の目の前にいる二人はにっこり笑っていた


「そうよ」

「しかし、わしは見ての通り日本人ではない。だから君には外国に住んでもらはなければならないのじゃ」



─・・・・・・良い機会だ



私は常々ここを出たいと思っていた


理由は一つ


孤児院は貧乏だから

私がいなくなれば皆少しは楽な暮らしができるだろう


───しかし

いきなり知らない人の養子になる

その上外国に住むというのは少し…いや、かなり不安だ

すると老人はそんな私の心を読んだかのように言った


「君には日本で一年間一人で暮らしてもらいたい」


…こちらもこちらでなかなか不安だ


「家はもう借りてあってな。ここの真正面の家じゃ」

「えぇっ!?」


ここの正面の家と言えば庭付き一軒家赤い屋根の大きなお家♪だ


「・・・と言う訳で」


どんな訳だよっ!(ビシッ)


「早速行こうかの」

「え?あ、はい」


私はそのまま老人の後についていった









…そういえば・・・・・・

私はまだこの人の名前を知らない


「あの〜…」

「ん?なんじゃ?」


私が控えめに声をかければ、老人はにっこり笑いながら振り向いた


「貴方のお名前は…?」

「おぉ!そうじゃったな。わしの名前はアルバス・ダンブルドアじゃ」

「あるばす、だんぶるどあさん?」

「そうじゃよ」


私が名前を呼ぶと殊更嬉しそうに笑った


「しかし、今日から君はわしの子どもになるわけじゃからお父さんと呼んでおくれ…いや、もうそんな歳ではないからお祖父ちゃんかの?」


そしてフォッフォッフォッと楽しそうに笑った


「お父さん・・・」


私は早くもこの人の事が気に入った

だからもうこの時にはこの人の養子になると言う事に対する不安は無くなっていた


「…さて、今日から一年間ここが君の家じゃ」








家の中にはすでに生活に必要な物がすべて揃っているようだった


「これが家の鍵、そしてこれが君の部屋の鍵じゃ」


お父さんは私に金色の鍵と銀色の鍵を渡した


「・・君にはここで生活する上でいくつかの決まりを守ってもらわなければならない」

「…なんですか?」

「一つ目は学校には行かない事」


・・・何があってもこれだけは破らないだろうな



「二つ目は家事は自分でやること。三つ目はこの家でこれだけを一生懸命勉強する事…」


そう言ってお父さんが指した先には沢山の本があった


───あれ?

あんな沢山の本、さっきはなかったような…


「特に英語勉強はしっかりとやる事」

「はい」

「そして四つ目はここで勉強した事は絶対誰にも言わない事。…どうじゃ?守れるかな?」

「はいっ!ところで…この本は何ですか?」


私はいくつかの英語で書かれた分厚い本を指して聞いた


「おぉ!忘れておった」


するとお父さんは服から棒を出して軽く振った

───・・・え?

あの本は確か英語で書いてあったよね?


















─────日本語になってる












私は本を一つとって見てみた


「“基本呪文集(一学年用)ミランダ・ゴズホーク著”…って、呪文?」

「左様。君には来年から“ホグワーツ魔法魔術学校”に転入してもらう」

「“魔法魔術学校”!?!?それに・・・ホグワーツ?それはどこにあるんですか?」

「ロンドンのキングスクロス駅からホグワーツ特急で半日のところじゃ」

「ロンドン!?」

「そうじゃよ。だから君は英語を勉強しなくちゃならないんじゃ」


お父さんはニッコリ笑っていた


「君は魔法を勉強したいじゃろ?」

「は、はいっ!!勿論です!!!!」


すごい!

凄すぎる!!

魔法が使えるようになるなんて!

いろんな本を読んでずっと憧れていた魔法が今、私の手が届く所にあるんだ!!

私が目を輝かせてお父さんが声をかけた


「…さて、わしはそろそろいかねばならん」

「えっ?」

「魔法界の方での仕事が沢山あっての」

「でも…」


今の所全く知らない魔法を一人で勉強するのには少し無理がある気が…

「ここにある本は必ず読んで勉強しなければならない本じゃが・・・
もし他の本が読みたかったり調べたかったりしたらの部屋の隣に図書室を用意したからそこを利用するといいじゃろう」


何っ!?

家に図書室!!?

読書が好きな私にとってこれは本当に嬉しい


「それでも分からない事があればわしが月に一度ここに来るのでその時に質問しなさい」

「はい!」

「必要な物があればこれで買うと良いじゃろ」


お父さんは私に財布を渡した


「ではな」


そういってお父さんはポケットからキラキラ光る粉を出して暖炉に向かった


「あ・・お父さんっ!」


お父さんが暖炉の一歩手前で立ち止まって振り返った


「あの…」


・・・言ってもいいかな?


いいよね?

だってここはお父さんの娘の家だもん


「どうかしたかね?」





「…いってらっしゃい」




それを聞いたお父さんの顔は今までとは違う顔になった

もっと優しい、相手を包みこむ様な…


「あぁ、行って来るよ」


お父さんは暖炉に粉を振りかけた

すると炎が音を立ててエメラルドグリーンに変わり高く燃え上がった

お父さんはその中に入り「ホグワーツ校長室」と叫ぶと姿を消した──────




















































それから私は充実した毎日を過ごした




中学校三年間の英語は二ヶ月で終わった


それから半年で一年分の魔法の勉強も終らせたし、他の学年にも手を付けた



何たって魔法の勉強だ!

楽しくない訳がない



・・・・これもイジメられる原因かもしれない







独り暮らしが長くなるにつれて料理など家事の腕も上がったし、お菓子もよく作った

お父さんともどんどん仲良くなっていた

そして、またじめじめと暑い日本の夏が来た─────




















































───ピンポーン









誰だろう?


私はインターフォンの受話器をとった


「はい、もしもし」

「Hello. This is RubeusHagrid.」



がが、外国人さん!?



「Can I speak to ,please?」


そう言えばお父さんがとても大きいけど、とても優しいハグリットと言う人が来るって言ってたな

きっとその人だ!



「ディ・・・This is . Please,wate a minute.」

「OK.」


私は受話器を置いて玄関の扉を開けた

そこには私が予想していたよりも更に大きい人が立っていた


「・・Hello?」

「Oh! Hi!」


大きな人は私に向かってニッコリ微笑むと自分のポケットをゴソゴソと探った

そして手紙を取り出すと私に渡しながら言った


「This is a letter which from your father.」

「From my father?」

「Yes. Please read this now.」

「I see.」


私は封筒を開けて中から手紙を取り出して読んだ








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私の娘、

やぁ、
君は英語も魔法も一生懸命勉強したから今年からホグワーツに通えるじゃろう。
しかし、いきなり外国語だらけの所に入るのは少々不安じゃろう?
だから、わしが今から一つ、に魔法をかける。
英語が自由に使える様になる魔法じゃ。
しかしこの魔法はだんだん効果が薄れてしまうのじゃ。
でも、今まで一生懸命勉強してきたならこの魔法が切れる頃には魔法にかかっている時よりも自由に英語が使える様になっているじゃろう。
では、この手紙を読み終ったらビリビリに破りなさい。
そうすればに魔法がかかるじゃろう。
ホグワーツで会おう!

君の父より愛を込めて

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私は手紙を2、3回裂いた

すると手紙は煙となって消えてしまった


「どうだ?俺の言ってる事が分かる様になったか?」


大きな人は期待に満ちた目で私の顔を覗きこんだ


「さっきから分かってましたよ」


笑って答えると少し顔を赤くした


「そうだったな。あー、改めて言う。俺はルビウス・ハグリットだ」

・ダンブルドアです」


私はハグリットさんが伸ばしてきた大きな手をとって答えた


「ハグリットと呼んでくれ、皆にそう呼ばれとる。それに敬語も使わんついい」

「わかった。よろしくね、ハグリット!」


そこでやっと、私たちが玄関口で話していて、近所から注目を集めていた事に気が付いた


「とりあえず上がって」

「スマンな、邪魔するぞ」


大きいハグリットが家の扉をくぐるのは一苦労だったが入ってしまえば後は楽だった

家はそれだけ大きいのだ!


「何か飲む?」

「あぁ、冷たい物をもらえるか?」


私はインテリア用に置いておいた錻のバケツを綺麗に洗い、氷と濃いめの紅茶をたっぷり入れて持って行った


「どうぞ」

「あぁ、どうも」


ハグリットはズズっと紅茶をすすった


「あー、うまい」

「よかった。それで、こんな時間に今日は何しに来たの?」


今は午後の7時だよ;


「おぉ!忘れる所だったわ!」


ハグリットはうっかりといった感じで額をパチンと叩いた


「ダンブルドア先生様からもう一通手紙を預かっとる」


先生?と思ったがその質問を口にする前にハグリットはほれと言って分厚く大きい封筒を渡した


「開けて読んでみぃ」

「うん」




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ホグワーツ魔法魔術学校校長アルバス・ダンブルドア


親愛なるダンブルドア殿この度ホグワーツ魔法魔術学校の二年生にめでたく転入を許可されました事、心よりお喜び申し上げます。

教科書並びに必要な教材のリストを同封いたします。

新学期は九月一日に始まります。

敬具



副校長ミネルバ・マグコナガル

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「えっ?お父さんってホグワーツの校長先生だったの!?」


ハグリットは殊更ニーッコリと笑った


「ああ、そうだ。だが、それだけじゃねぇ、偉大なお方だ・・・
おっと!こうしちゃおれん。今日はダンブルドアにお前を買い物に連れていってやってくれと頼まれてな」

「今から買い物?何を買うの?」

「ロンドンはまだ朝だ。リストに乗っとるだろが。制服と杖を持っとらんだろうが?」

「でも、どこで買うの?少なくとも日本じゃ変えないと思う」

「う〜む。確かにこの国では買えんな」

「じゃあ、どうやって行くの?」

「暖炉で行く」

「暖炉で?」

「そうだ。この“煙突飛行粉”を使ってな」


いや、そんな当たり前の事の様に言われても分からないって

粉と暖炉でどうやってロンドンまで行くって言うんだ






──────もしかして!



「それを暖炉に振りかけてから行く先を言うの?」

「その通りだ」


やっぱり

いつもお父さんがやっているアレなんだ


「じゃあ、お前さんが先にやってみぃ。行く先は漏れ鍋だ」

「う、うん」


私はハグリットの持っている革製の巾着から粉を一摘みとって少々の不安と膨大な期待と共に暖炉に粉を振りかけ、大きくなったエメラルドグリーンの炎の中に入って叫んだ



「漏れ鍋!!」













目の前の景色が次々と…と言うか、ぐるぐると変わっていった

すると体が地面に落とされた感覚がして周りを良くみると薄暗いパブが見えた

暖炉から出て自分の体に付いた煤を払いながらも私は目を最大限まで開いてパブの様子を見た




まもなく、ドシンッと言うかなり大きい効果音と地響きと共にハグリットが暖炉から現れた

…さっきよりも暖炉が少し大きくなってる気がする


「無事に着いとったか。良かった」


ハグリットは暖炉から出ると煤を払った

体が大きくて大変そうだからズボンに付いた煤を払うのを手伝った


「ありがとな」

「どういたしまして」


私が笑いかけるとハグリットはまたしても微妙に頬を染めた


「?どうしたの?」

「いや!なんでもねぇ。さて、行くか」


ハグリットは手をパンパンと払いながらパブの裏口を開けた


「ここで買うの?」

「いや、違う。買うのはダイアゴン横町だ」


しかし見えるのは煉瓦の塀とゴミ箱だけだ


「ここから行くの?」

「そうだ。まぁ、見ちょれ」


ハグリットはどこからともなくピンク色の傘を出すとそれで煉瓦の一つを叩いた


・・・すると

煉瓦が動き出して間もなくアーチを作った


「すごーい!」

「ほれっ、行くぞ」


私はハグリットとアーチをくぐった


「ここがダイアゴン横町だ」


アーチの向こうは、まさに魔法の世界だった…


「さて、まずはグリンゴッツに行って金を引き出さんとな」


そう言ってハグリットがズンズン行ってしまうので私はキョロキョロしながらも一生懸命ついていった


「ねぇ、ハグリット。私お金なんて持ってないよ」

「当たり前だ。だから今からとりに行くんだ」


そう言うとハグリットは大理石造りの大きな建物に入って行った


私はハグリットの服の裾を引っ張って聞いた


「あそこにいるのが小鬼?」

「あぁ、そうだ」


真っ直ぐ受付に行くと小鬼に話しかけた


「あー、・ダンブルドアの金庫に行きたいんだが」

「かしこまりました。鍵をお持ちですか?」

、金色の鍵を持っとるか?」

「あるよ」

私はポケットから家の鍵を出してハグリットに渡した


「これが鍵だ」


そう言ってハグリットはその鍵を小鬼に渡した(名付けて鍵リレー)


「では、あの者に案内させます」


小鬼がそう言うと私たちの後ろにいた別の小鬼が私達の方に来て頭を下げた


「こちらでございます」


私達は小鬼の後ろを付いていった


「ここからはトロッコにお乗り下さい」


薄暗いトンネルの中、松明に照らされたレールがテカテカと光っていた


「早いのでしっかりとつかまって下さい」


私達が乗り込むとトロッコはすぐに発射した


─…‥は、早い!

乗ったことはないけど、ジェットコースター並…いや、ドドンパも顔負けのスピードだ





「着きました」


小鬼は先に降りると私が降りるのに手を貸してくれた


「あ、ありがとうございます」


ハグリットは青い顔をしてゆっくりとトロッコから降りた


「ハグリット、大丈夫?」

「あぁ、大丈夫だ」



「では、開けます」


小鬼は目の前にあるハグリットが10人肩車しても通れそうなくらい巨大な銀色の扉に鍵をさしこむと右に90゜傾けた



カチッ



いかにも「鍵が開きました」的な効果音が聞こえて扉が開いた



なかには金、銀、銅貨で出来た沢山の山が扉の三倍くらい高い天井スレスレまで積まれていた


「うわぁっ!目が眩しい!!」

「これ全部お前さんの物だ」


ハグリットはニッコリ笑って言った


「わ、私の?これ…全部?」

「あぁ、そうだ。みーんな一人のもんだ」


信じられない

本当にこれが全部…?


「お父さんのは?」

「ダンブルドア先生はこの金庫と同じようなのをあとえ〜っと…」

「132個持っていらっしゃいます」

「そう、そうだ」

「うわ〜、すごいね」

「それじゃ、袋か何かに入れていくとしよう。沢山入れておけよ」


私は今袋を持っていなかったのでハグリットに一つ貸してもらった


そしてその袋を三色の硬貨で一杯にすると金庫から出た


「よろしいですか?では、参りましょう」

「・・ところでこのトロッコ、もうちぃっと遅くならんか?何度乗っても慣れん」

「速度は一定に保たれるようになっております」


三人(?)がトロッコに乗り込むとすぐに出発して、三分後にはまたロビーに戻って来ていた






「ふぅ、長い旅だったわい」

「最速の旅だったね♪」

「んじゃ、まずは制服を買いに行くか」

「アイアイサー!」


私達はグリンゴッツを出た

ハグリットに任せてついていった所は“マダムマルキンの洋装店─普段着から式服まで”だ




中に入るとずんぐりした愛想の良い魔女が話しかけてきた


「いらっしゃいませ。お嬢ちゃんはボグワーツ?」

「はい」

「そうですか。ここで全部揃えられますよ」


魔女がニッコリと笑いながら言った


、俺は自分の服を見てくる。10分もしたらここに戻ってくるからな」

「わかった、行ってらっしゃい」


ハグリットは店の奥にドシドシ歩いて行った




魔女は私を踏台にの上に立たせると頭から長いローブを着せて丈を合わせてピンで留めていった


「あらまあ!随分と小柄ねぇ。何処の出身?それともハーフかしら?」

「日本に住んで居ます」

「そうなの?そのわりには英語が上手ね」

「はい、沢山勉強しましたから」

「じゃあ、お嬢ちゃんはきっとホグワーツで主席になれるわね!」


その時、私の真正面にある大きな鏡に写った燃えるような赤毛の親子が映った

子供の方が私をじっと見てたのでニッコリ笑いかけると顔を髪と同じぐらい真っ赤にしてふいてしまった




「…さあ!できましたよ」


鏡の自分を見ると丈がちょうど良く直された真っ黒なローブとマントを着ている


…いつの間に


「同じ服でも着てる人によって随分違うのねぇ。お嬢ちゃんが着るととっても素敵に見えるわ!」


魔女はまだ何か言っていたけど、ちょうどハグリットが戻ってきた


「ハグリット!」

「おぉ、終わったか。によぉ似合っとる」


ここではローブ三着、三角帽一個、スェーデン・ショート─スナウト種の皮(鱗?)で出来た手袋一組、マント一着を買って出て行った


「次は教科書だな。ロックハートの著書何か一冊ももっとらんだろうが?」

「うん。でもそれ以外は全部あるよ」


私達が店に入ろうとした時、店の中が何だか騒がしかった


「なんだろう?喧嘩…みたいだけど」

「うーん。取り合えず入ってみよう」

「そうだね」
















店の中では乱闘が起こっていた

本が皆の頭に降り注ぎ、双子の男の子は「やっつけろ、パパ!」と叫んでいて、さっき見た赤毛の婦人は悲鳴をあげ、店員も叫んでいた

そんな中、私の隣から一際大きい声がした


「やめんかい、おっさんたち、やめんかい─」


ハグリットは本の山を掻き分けてこの騒動の張本人達の所まで行って二人を引き離した

喧嘩していた二人のうち、プラチナブロンドの髪をした男は目を殴られた痕があり、細身で禿げかかった頭に赤毛が残っている男は唇を切っていた

プラチナブロンドヘアーの男はさっきマダムマルキンの店で見た女の子に本を突き渡した


「ほら、チビ─君の本だ─君の父親にしてみればこれが精一杯だろう─」


その男はそれだけ言うと息子と思われる男と同じプラチナブロンドヘアーの男の子に目で合図をして出て行こうとした


──が・・・


男の子は動こうとしない

私の事を見たまま固まっている


私が苦笑いを浮かべると男の子はっとしたようで、顔を真っ赤にすると慌てて辺りを見回し父親の後を追った


「アーサー、あいつのことはほっとかんかい」


ハグリットは赤毛の男のローブの襟首をもつと引っぱった

…ローブの乱れを直したかったらしい


「骨の髄まで腐っとる。家族全員がそうだ。皆しっちょる。マルフォイ家のやつらの言うこたぁ、聞く価値がねぇ。そろって根性曲がりだ。そうなんだ。

─ん?ハリー、どうした?」


ハグリッとはクシャクシャで黒髪の男の子に言った


「‥ハグリット…その子は?」


気が付くと店にいる人全員私の事を見てるようだった


「ああ、この子はっちゅうて、新学期からホグワーツの二年生だ」


でも、誰の耳にもこの言葉は入らなかったようだ


「…こんなに可愛い子がホグワーツにいたか?」

「いや…世界中探したっていないぜ、兄弟」


双子がお互いに肘でつつきながらいった


「はじめまして、お嬢さん。俺はフレッド・ウィーズリーだ」

「俺はジョージウィーズリーだ」


赤毛の双子は紳士的なお辞儀をしながら自己紹介した


「俺達は今度ホグワーツの三年生だ。よろしく」


二人に手を出されて、私も手を出しかけたが…どうすればいいんだろう?

一本の手で二人と握手はできない

すると二人は躊躇う事なく二人で私の手をとってブンブンと上下に振った


「あ、よろしく…」


「僕はロン・ウィーズリー」

「私はハーマイオニー・グレンジャーよ」

「僕はハリー・ポッターだ。僕達は二年生だよ。よろしく」

「よろしく」


同い年なのに三人とも私よりも大人っぽい感じがした

やっぱり・・・身長のせい?

ロンなんか私よりも頭1.5個分は大きいだろうなぁ




挨拶をしていくうちに、赤毛の人達は皆家族という事が分かった


「さて、俺達はまだ買い物が残っちょるから急がんと」


「新学期にまた会おう!」といって彼等と分かれて私達は急いで買い物を済ませて行った















「必要な物は皆買ったな?ほんじゃ、最後に杖を買いに行くか」


待ってました!

私は今日、何よりもこれを楽しみにしていたのだ!



私達は足早にオリバンダーの店に向かおうとしたが途中ハグリットが立ち止まった


「どうしたの?」

「そういやぁ、まだにお祝いを買ってやってなかったな」

「そんな、いいよ」

「いやいや、ペットはどうだ?梟なんか本当によぉ役に立つぞ」

「う〜ん、でも…」


ペットは正直言うと飼いたいと思うでも梟はなぁ…

目がギョロギョロしてて何か怖いような…


「そんじゃ、行くぞ」

「えっ?うん」


どうやらハグリットの中では梟を買う事に決まったらしい

私達はイーロップ梟百貨店に入った


「どんなやつがえぇかな?」

「…なるべく小さい方がいいな」

「じゃあ、コノハズクだな」


ハグリットは店の中を歩いて行ったので私は慌ててついていった


「うーん。なかなかえぇのがおらんなぁ」








「…‥ハグリット、私この子がいい」








私が見付けたのは♂のオフホワイトのコノハズクだ

すると店員がどこからともなく現れた


「お客様はお目が高い!この子は先週入荷したばかりです」

「白いコノハズクか?」

「はい、そうです。大変めずらしいですよ」

「そのわりには他の梟と値段があんまり変わらんな」

「実はこの子は人見知りが激しくて誰にもなつかないんですよ。気性も荒くてね」


しかし、今はとても静かにしている


「おや?いつもは誰かいるとそれだけで暴れまわるんですよ。

・・・もしかしたらお客さんなら大丈夫かもしれませんね。ちょっと出してみましょうか」


店員が籠の扉を開けるとコノハズクが飛び出し、まっすぐ私のところまで来るのでビックリして目を瞑った

次の瞬間、肩に重みを感じて恐る恐る目を開けてみると、なんとコノハズクが私の肩に止まっていた


「これはこれは」

「おぉ!」

「ハグリット!私この子がいい!!」


ハグリットはニッコリ笑って頷いてくれた










─コノハズクを買った後、私達は今度こそ本当に杖を買いに行った

店に入るとどこかでベルの音が聞こえた

すると間もなくして一人の老人が出てきた


「いらっしゃいませ」

「こんにちは」

「久しぶりです、じいさま」

「一年ぶりじゃの、ルビウス」

「今日はこの子の杖を買いに来ました」

「おぉ、そうか。では、お嬢さん、杖腕はどちらですかな」

「杖腕?利腕の事ですか?」

「そうじゃよ」

「右利きです」

「腕を伸ばしてくだされ」


老人はポケットから巻尺をとりだすといろんな所の寸法を測って、それが終ると巻尺をしまいながら棚の方に歩いて行った




「‥では、これを試してみなされ。樫の木に一角獣の鬣25cm重みがある」


杖をとって軽く振ろうとした時、老人はその杖を引ったくってしまった


「いかん、いかん」


老人はまた別の杖を持ってきた


「滅多にないんじゃが…」


老人の開けた木箱の中にはキャラメル色をした短めの杖が入っていた


「シナモンの木に一角獣の尻尾、18cm。スナップが良く効く」


私はその杖を手にとった




…なんだか今までのとは違う感じがする




軽く上から下に振り下ろすと部屋中が小さな白い花とシナモンの香りに包まれた


「うむ、すばらしい!」


老人とハグリットはにっこりと笑った








私達は老人に杖の代金を払うと店を出て漏れ鍋に戻った


「…そいじゃ、新学期にな」

「うん!またね」


私達はそれだけ言い来た時と同じ方法で家に帰った












































「ふぁ〜、疲れた」


私はソファに沈みこんだ


「・・とりあえず君に名前をつけなきゃだね…」


私は鳥かごを持ち上げて中に居るコノハズクと目を合わせた


何がいいかな?

白いからシロちゃん!


…って言うのは犬みたいだし〜



白いもの‥白いもの…





・・・あっ!





「スリート!スリートって言うのはどうだろう?」


私はスリートを見つめた

スリートは目をクリクリとさせて‥そして…


「うん、良い名前だね。気に入ったよ」







「・・・・・ほぇ?」


「あはは!何て声を出すのさ!?変なの〜」

「す、す、すっ、スリート!!??!?」

「なぁに?」

「喋ってるよ!?!?」


混乱して何か変な事を言ってしまったけど、そんな事には気付かない…という事にしておこう;


「知ってるよ。僕喋れるんだ♪これからよろしくね?」

「えっ?あ、こちらこそよろしく…」


最初こそ混乱したけど、私はこの日新しい友達が二人できました…
















次の日から、私は今まで出来なかった妖精呪文と変身学をみっちりやった

結果、飛行訓練以外は全科目四年生レベルくらいまでは出来るようになった







───そして8/31が来た



































「よっし!」


私はお父さんに貰った大きくて軽いキャスター付きのトランクに必要なものを全部入れた


いつの間にか部屋に置いてあった銀色のスルスルしたマントも持っていく事にした



「忘れ物はないよね?」

「うん。多分大丈夫だと思う」





ハグリットは煙突飛行粉で9と3/4って言えば大丈夫って言ってた


─今、日本は19:27

ロンドンは10:27だろう

早いけどもう行こうかな…




私はトランクと鳥籠を持って暖炉に向かった


さすがはお父さんに貰った“小さいけど沢山入って軽〜いトランク”!

一杯入ってるのに軽い!


「じゃあ、行くよ?」

「いいよ」


私はハグリットに貰った一つまみの煙突飛行粉を振りかけて、燃え上がった炎の中に入った


「9と3/4番線!」







─あ〜、まただ

目が回る〜!



今日は前回よりも長かった


多分五分は経っただろうと思われるころ、やっと地面に足が着いた


「おっとっと…ここが9と3/4番線かぁ」


私はこけそうになりながらも暖炉から出て辺りを見回した

私が暖炉から出るとすぐに火が消えてしまった

人混みを掻き分け、列車の前から1/3の辺りに空いているコンパートメントを発見して入った


「発射まであと10分だって」


私はトランクを椅子のしたに入れて、籠の扉を開け、スリートを出してあげた


「窓の外には出ないでね」

「うん、分かった」












─そして


ホグワーツ特急は発射の汽笛をホームに響かせた














Next→一章



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長〜〜〜〜〜い序章がやっとこさ終わってくれました(汗)
私自身、「どこまで続くんだよ」とか思ってましたからね(滝汗)
・・・そのくせハリー達とは挨拶だけで終わってスイマセン・・・・・・・・・
かか感想など下さると泣いて喜びます!!

鵺宮 翡翠